2022年栃木県朝日フォトグランプリに多数ご応募頂きましてありがとうございます。2022/11/23(水・祝)、栃木県文化センター第4ギャラリーにて写真家・古市智之先生による最終の公開審査が行われ、グランプリ以下各賞の結果が決まりました。
応募総数、一般776点(自由部門393点、自然部門383点)18歳以下部門48点 合計824点の中から2022年栃木県朝日フォトグランプリに輝いたのは佐川栄治様「虹降りる」でした。 なんと佐川さんは昨年に続いての2年連続の受賞です。古内先生が最後に決定した瞬間、息を飲みながら審査を見学していた多数の観客からはどよめきが起こりました。 グランプリおめでとうございます!
表彰式は11月27日午後2時から栃木県文化センター特別会議室にて行われました。
古市智之先生の総評と準特選までの作品をアップいたします。
受賞者の皆様、おめでとうございました。
総評 古市智之先生
今年は長引くコロナ禍での開催となりました。特に素材の宝庫ともなるお祭りやイベントなどがことごとく中止に追い込まれ、撮影者の皆さんも苦労が耐えなかったと推察します。そんな中にあってもやはり目を引くのは視点の鋭さ。風景部門では個性的な作品が光りましたし、自由部門では物語を感じる作品も多くありました。
一方で、予備選の段階ですが、滝や神社で赤いコートと赤い傘をさした女性の写真が散見され、撮影者はみな違う人でした。これは一種の流行なのかと思うのですが、流行りを追えば、他人もそうするものと心得たほうが妥当です。フォトコンテストという場では、やはり撮影者自身の視点が大事。自分の目を信じ、さらに心を磨き上げてください。
グランプリ 佐川栄治「虹降りる」
立ち枯れの木に漂う哀愁や寂しさはもちろんのこと、スポットライトのような光が当たり、凛とした美しさも同時に感じられます。さらに上空には虹も出るという幸運にも恵まれましたが、あえて反映で見せるという大胆な発想に驚きました。この構図だからこそ水面に波紋がはっきりと見え、雨、晴、虹という三位一体からなる天気境界の融合に魅了されるのです。
自然の部 金賞 和泉一雄「朝光に燃えて」
朝日に輝き、赤く染まった湖畔の樹林を主題とする作品は数多くあるのですが、この作品の刮目すべきところは、すでに葉を落として眠りにつくかのような手前の浮島の木立を取り入れたこと。あえて木々の隙間から透かし見ることで、ただ美しいだけでなく、複雑な季節の変遷までもが伝わってくるとともに、燃えるような赤い色が引き立つ効果も出ています。
自然の部 朝日新聞社賞 大塚 芳彦「稲妻走る」
画面中心部から放射状に伸びる稲妻の迫力がすごいですね。地上の風景を取り入れたことで、縦横無尽に走る稲妻の光の強さと、ポツンと灯る人工的な街明かりの小ささが、人の営みと自然の大きさを表しているような対比となって際立ちました。わずかですが田んぼが写っていることも、稲を育てるという日本古来の伝承を示しているようで詩的です。
自然の部 全日本写真連盟賞 君島 哲郎「斜光」
何気ない自然の情景ですが、全体を見せるよりも、どこをどう見せるかを過不足なく見極めた作者の視点が効いています。成功のカギはシャッタースピードの選択。木々の間を流れ落ちる水が激しすぎず、滑らかすぎず、丁度良い飛沫感が出ていることで、爽やかな空気感が凝縮され、新緑から夏にかけての冷たい水の感触までもが伝わって来るようです。
自然の部 銀賞 新井 大路「ドラマチックな朝」
朝の光を受けて、今まさに咲き誇らんとするハスの生命力が美しく表現されています。背景の山の姿も優美で、山里にひろがる田園を優しく見守っているように思えます。特徴的なハスの葉を大胆に取り入れた構図も面白いですね。
自然の部 銅賞 青野 康廣「銀河に響く水音」
夜空を表すのに「星降る夜」という表現がありますが、滝のちょうど真上に天の川がある構図を選んだことで、まさに星が降って水となり、滝となって流れて行くかのような美しい物語を連想し、秘められたロマンを感じました。
自然の部 県本部長賞 貝増 弘行「輪廻転生」
朽ち果てたハスの葉のそばから新しい芽が吹き、まさに輪廻の理を表しているようです。ハスは仏教とのつながりが深いことからも、その印象が強まっています。やや空間に余裕をもたせ、寒々しい季節感を演出したことも効果的です。
自然の部 県本部委員長賞 小林 恵子「朝霧満ちて」
薄暗い森の中で、紫陽花の清楚な白い色が目を引きます。ことさら紫陽花をアップにせずに、適度に引いた構成が良かったですね。そのおかげで霧が森の中に立ち込めている様子が鮮明になり、幽玄たる静謐な雰囲気が出ています。
自由の部 金賞 高田 茂「集中!」
背後に火が迫っているという緊迫した状況下で、ゆうゆうとゴルフをプレーする人物とのギャップに、最初はナニコレという驚きがありました。さらに安全であることがわかってからのじんわりとこみ上げてくる作者のユーモラスな視点も効いています。望遠レンズの特性を利用してゴルフ場と野焼き現場を圧縮し、とても面白い作品を作り上げています。
自由の部 朝日新聞社賞 八木橋 裕司「お姉ちゃんになった日」
産まれたばかりのきょうだいに視線を注ぐお姉ちゃんの優しい眼差しが愛らしいです。表情からはまだ戸惑いの色も伺えますが、隔てられたガラスにそっと手を当て、きょうだいの温もりを感じ取ろうとしているかのような仕草も良いですね。人とのつながりが薄くなっていったコロナ禍において、大切な家族の記録となる素敵な作品です。
自由の部 全日本写真連盟賞 青野 康廣「鉄路に惑う」
ホタルが舞う中を走るローカル線に旅情を感じます。まずはローカル線を撮影しておき、その上にホタルを比較明合成で何カットか合成していると思いますが、その枚数が過不足なく良い判断だったと思います。場所柄写っているのはヘイケボタルだと思われますが、近年農薬の影響などで数が減り、あまり多いとわざとらしいと感じたかもしれません。
自由の部 銀賞 渡部 久恵「ベテラン定員さん」
コロナ禍でも店頭に立ち、お客を迎えるおばあちゃんの活き活きとした目の輝きに惹かれました。顔よりも大きな手には幾多の苦難を乗り越えてきたシワが刻まれ、新型コロナにも負けてたまるかという心意気が写っているようです。
自由の部 銅賞 久郷 正美「ふる里の駅」
駅へと続く、菜の花畑の一本道のように見える構成がとても良いですね。その中で花を摘んでいる親子の姿が印象的です。一面の菜の花は、やがてこの駅から巣立っていくであろう彼女の未来さえ祝福しているようでもあります。
自由の部 県本部長賞 大屋 信幸「チャレンジ」
画面をわざと斜めに傾け、元気に遊ぶ様子が強く印象付けられています。子供がマスクを付けて遊んでいる違和感は、コロナ禍ならではの象徴的風景。逆に言えば今しか撮れない姿であり、それを記録することも大事だろうと考えます。
自由の部 県本部委員長賞 沢畑 克人「千切れ雲」
本来なら逆さの画面が正しいのでしょうが、見せ方を工夫して見事なアート作品に仕上げました。さらにコントラストを高めに設定して非現実感を演出したのも狙いでしょう。ここまでやりきったからこそ作者の意図が明快になりました。
18歳以下の部 最優秀賞 福上 麗菜「笑顔の収穫」
18歳以下の部 優秀賞 川島 昊「紅葉流」
18歳以下の部 優秀賞 遠藤 瑚々「恋い初める」
18歳以下の部 優秀賞 須藤 ゆい「この指止まれ」
自然の部 特選 伊藤茂雄 「水輪曲芸」
自然の部 特選 内田 隆 「団欒」
自然の部 特選 鈴木十三男「夕照」
自然の部 特選 川元牧也「明日への架け橋」
自然の部 特選 水森英雄「予感」
自然の部 準特選 伊藤辰明「深山の流れ」
自然の部 準特選 塩野いくお「寒中満月之夜れ」
自然の部 準特選 江川多嘉「秋海棠咲き誇る」
自然の部 準特選 君島利夫「季節は晩夏」
自然の部 準特選 川原裕美子「厳流の彫刻」
自然の部 準特選 岡田富子「夜中のひそひそ話」
自然の部 準特選 棚井行夫「アラジンランプ」
自然の部 準特選 増川保紀「夕照に佇む」
自然の部 準特選 井上 賢「空が割れる」
自然の部 準特選 小池一巳「厳冬の朝」
自由の部 特選 本田禮人「終焉」
自由の部 特選 新井辰男「早朝出勤」
自由の部 特選 齋藤一郎「エピローグ」
自由の部 特選 塙 寛「夜の訪門者」
自由の部 特選 江草保幸「車窓に富士」
自由の部 準特選 穐山克良「ひととき」
自由の部 準特選 管野千代子「元三人官女」
自由の部 準特選 高山尚子「生きて」
自由の部 準特選 仲澤正男「昼下り」
自由の部 準特選 長谷川静江「大安吉日」
自由の部 準特選 金子利市「妖狐」
自由の部 準特選 秋本悦男「街を覆いつくす」
自由の部 準特選 石澤 潔「灯火」
自由の部 準特選 船見征二「笑顔」
自由の部 準特選 中野一郎「予感」