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第49回 県本部展

2022/4/29 審査員:報道写真家 渡辺幹夫氏

《総評》

新型コロナウイルスの感染拡大によって、感染への不安とともに行動制限が加わり、不自由な生活に辟易とした毎日が続いています。写真をこよなく愛するみなさんが、勝手気ままに写真を撮影できない日々が来るとは誰もが想定外のことだったと思います。

この未曾有の苦境のなか、第49回全日写真連盟栃木県本部写真展が3年ぶりに開催されました。展示会場となった宇都宮市文化会館には、各支部のみなさんが久しぶりに集い、マスク姿でしたが手際よく飾り付けが行われました。リアルで写真を鑑賞できる喜びを感じました。

 写真には、撮影者が意図的に伝えたいメッセージや感性を表現するという楽しみもあります。そのうえで、観る人に写真の持つ雰囲気や空気感をどう感じてもらえるのだろうかという想像する楽しみもあります。その体験ができるが写真展でしょう。この機会を提供していただいた県本部・鈴木委員長をはじめとする役員のみなさんに敬意を表します。

 今回は8支部会員と個人会員から約77点の四季折々の作品が寄せられました。

 時代はコロナ禍に苦しむなか、平和な世界が戦時下の様相に一変して混沌としています。こんなときだからこそ、明るくあすを感じさせる写真が大切だと感じます。豊かな自然があふれる足元に目を向けて、地道に写真を撮影し続けていただきたいと思います。そんな願いも込めて、上位10点を選びました。

 

【金賞】鈴木正一郎賞

 「この先渋滞中」 伊藤茂雄(横川)

まずは子どもたちの自然な行動パターンに感服。この光景に遭遇した撮影者は、この好機を逃さず的確なレンズワークでシャッターを押しています。写真の構図はあくまでも子どもたちが主役なのが高評価です。青空の下、かわいらしい赤い帽子がさらに画面を引き立てています。

【朝日新聞社賞】

 「天使の梯子」 櫻木賢治(佐野)

都会とは違い、空が広いです。太陽の光と雲が織り成す風景は、大自然のなかで生きるどんな人にも感動を与えます。河川敷脇に建つ構造物と風力発電用風車もコントラスト創り出しています。モノクロに仕上げたのも好印象です。

【全日本写真連盟賞】

 「翔る」 涌井明男(サン)

なかなか心憎い構図で、シルエットが効果的です。狙っていたとしても、そう簡単には撮れないでしょう。東京2020五輪でも注目されたスケートボード競技は若い世代を中心に人気です。スポーツ写真を超越したセンスがとてもいいです。

【銀賞】

 「春の舞」 田中睦子(烏山)

鮮やかな色合いに圧倒されます。こんなにもうまくそれぞれのパーツが画面構成にはまるのも珍しいと思います。撮影会なのかもしれませんが、菜の花の黄色を中心にそれぞれの色が溶け込むように織りなす美を感じました。

【銀賞】

 「至福の時間」 高塩定男(横川)

モノクロの仕上がりは高評価。白毛馬の躍動感、風にたなびくススキの穂がとても印象的で、細部にわたってディテールが表現されているのが素晴らしいと思います。主役である馬とその生き様を見せる的確なレンズ選択が良かったです。

【銅賞】

 「高所作業」 管野千代子(那須)

送電線を守るのはとても高度な仕事と思わせる写真です。すべてオートメーション化された世界に生きるわれわれにとって、ここは手作業なのかと気づかされます。一枚に収められた6人がそれぞれの形態なのも絶妙です。素晴らしいシャッターチャンス。

【銅賞】

「孤愁」 新井辰男(足利)

数多くの組み写真のなかで、巧みな光の使い方を駆使したこの写真を選びました。深まる秋に斜光線の陽射し、そしてそこに生き物を絡めて「動と静」と「陰と陽」を表現したのがよかったと思います。

【銅賞】

「寒い朝」 大塚芳彦(サン)

白鳥の親子でしょうか。酷寒の朝、おとうさんが子どもたちに「きょうも一日、がんばっぺ」とあいさつしているような雰囲気です。背景処理が絶妙で、白鳥の息づかいがそのまま伝わってきます。レンズ選択も良く、微笑ましい写真になりました。

【県本部長賞】

 「幻夜」 柳澤サンティ(足利)

夜半の秩父盆地ということでした。まさに雲海たなびくなか、色とりどりの世界観が広がります。雲海の下に広がる人の営みを感じさせる秀逸な写真に仕上がりました。撮影場所の選択、稜線をしっかり入れている所も工夫されていて高評価です。

【県本部委員長賞】

 「煙たい修行」 八木橋裕司(足利)

この修行は何のため?この子どもさんがしっかりその内容を理解しているのか定かではありませんが、画面構成のふんわりとした雰囲気が、その過酷さを和らげています。望遠レンズを駆使して絞りも浅くしたのが良かったと思います。

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