• 全日本写真連盟 栃木県本部のホームページです。

2024年栃木県朝日フォトグランプリ 最終結果

2024年栃木県朝日フォトグランプリに多数ご応募頂きましてありがとうございます。2024/9/7(土)、栃木県文化センター第4ギャラリーB・Cにて写真家・山口規子先生による最終の公開審査が行われ、グランプリ以下各賞の結果が決まりました。

 応募総数、988点(自由部門528点、自然部門427点、18歳以下部門33点)の中から2024年栃木県朝日フォトグランプリに輝いたのは 佐川栄治様「厄払い」でした。佐川さんはこのコンテストでなんと3回目のグランプリ受賞です!

山口先生が最後まで悩まれて決定した瞬間、ハラハラドキドキで審査を見学していた多数の観客からは拍手が起こりました。 グランプリおめでとうございます!

 表彰式は9月14日午後2時から栃木県文化センター3階第一会議室にて行われます。

山口規子先生の作品別講評と各カテゴリー上位作品の作品をアップいたします。

受賞者の皆様、おめでとうございました。

焼き魚を食べる少女を、画面中央にまっすぐとらえた作品はとても力強く、見る人を惹きつけます。タイトルにある「厄払い」の日、顔に墨がつけられても、それを気にする感じでもなく微笑んでいます。そこには、これらの1年を祈る気持ちと少女の手からその日の寒さが伝わってきます。見ず知らずの少女をこのように自然体で撮る力や、瞳の中にきちんとアイキャッチを入れる作者の撮影テクニックにも脱帽です。少女のこれからの未来に、一筋の光を感じる素晴らしい作品です。

夕刻の美しい光を捉えたこの作品は、通常、横位置で撮りたくなってしまうこの状況を、潔く縦位置で捉えることにより、見る人を天高く伸びる空へと誘います。また、遠くにいるシラサギの白色が画面全体のポイントとなり、神聖な雰囲気を生み出しているのが特徴です。画面下にある水面の道筋と空の光の光芒がでる位置を、同じ位置にもってくる構図センスから作者の熟練の技を感じます。そして、何よりもこの瞬間を美しいと感じている作者の気持ちがひしひしを伝わってくる神々しい作品です。

大胆な構図がいいです。青い紫陽花に口をつけ、まるで蜜を吸い上げているような様子は、まさにタイトル通り「群青を啜る」。紫陽花を抑える手、紫陽花にかかる髪の毛、紫陽花につけた唇など、作者自身が撮りたいイメージを明確にし、それに突き進んでいることに共感がもてます。頬の柔らかさ、紫陽花の花弁の柔らかさ、唇の柔らかさ、それぞれの質感を大切にしながらも、独自の世界観を表現した作品です。

崖とカモシカの位置が絶妙にいいバランスの作品です。崖の影の部分を画面の対角線に置くことにより、作品全体に空気の流れを生んでいます。画面左下の草木と崖の所々に生えている草が、まるでカモシカを見守るように優しく包み込み、また影の黒い部分がカモシカの銀色の毛並みを一層引き立てている点から、自分の縄張りで常に1頭で生きるカモシカの哀愁と強さを感じる作品です。

 一見すると見過ごしてしまいそうな情景に足を止め撮影した、作者の空気を読む力が伺われます。興味深い点は、ピントを合わせる部分を窓から見える桜ではなく、教室の机に合わせている点です。写真の世界では、常に主役である桜をあえて、脇役にし、あくまでも生徒たちが使った机を、そして机の上に反射した光を大事に表現しています。この教室で学んだ生徒たちの声が聞こえてきそうです。見る人をさらにその奥につづく世界へと魅了する作品です。

 まず作者がこの小さな光を見つけたことに、作者の視点の柔軟性を感じます。草むらについた水滴を、前ボケで捉えたレンズワークもさることながら、レンズの特性を理解している作者のF値の選択も抜群です。画面の中の草の位置のバランスもよく、光が作り出す色だけを大切にした点から、まさにタイトル通り「宝石輝く」の宝石見つけた作者の喜びも感じ取れる作品です。

 一見すると「ん?何だろう」と思わせる作品ですが、鎖の影が水面に落ちて、波に揺れて変形しているところを、上手く切り撮っています。また光の弱い曇天を利用することにより、色のない世界に徹して、形の面白さ、自然が作り出すゆらぎだけに集中した作者の潔さがいいです。同じ形が2つとない揺らぎを見つけたことを、作者が楽しんでいる気持ちも伝わってくるデザイン性の高い作品です。

 残照を捉えたこの作品は、一羽の鳥を入れこむことにより、画面全体に物語が生まれた作品です。また画面下のススキの群生を入れこむことにより、この木の大きさや、そこで生きてきた木の年月が感じ取れます。鳥やススキと木が対話している構図も素敵です。これから始まる映画のワンシーンのような叙情的な作品です。

 スナップ写真の面白さが集約された作品です。4人家族でしょうか、奥さんが小さな子供を抱えながら、画面左端にいる旦那さんともう一人の子供をヤギと一緒にスマートフォンで撮影しようとしています。人の位置、ヤギの向き、鯉のぼりのクロスラインなど、画面全体のすべてがバランスよく、ほのぼのとした家族の所作を青空とともに捉えた瞬間写真は、まさにスナップ写真ならではの作品です。

 蓮の葉を捉えたこの作品は、緑の葉ではなく、枯れかけた葉を入れたことにより、画面全体の色のバランスが、とても上品に仕上がっています。また露出をアンダーにすることにより、この池の底知れぬ深い闇や、茎の位置を画面下半分に置くことにより、葉が夜空に咲く花火のような配置が興味深く、芸術性の高い作品です。

 お祭りの作品ですが、まずフレーミングが素敵です。ぱっと見ると左端の男性の顔に目がいきますが、この写真のポイントは画面中央にある手です。右端にシルエットになっている男性の手が祭りの勢いを制御しており、制御しなくてはならないくらい勢いがあるという証拠、つまり力強い神輿のエネルギーが伝わってきます。神輿の近くまで入り込み、神輿のエネルギーに巻き込まれている作者の鼓動も聞こえてきそうな作品です。

 トンボの羽の水滴が美しく表現されています。画面の中に茶色と白の2色でまとめることで、晩秋をより濃く感じ取れます。またト下向きのトンボの羽だけにピントを合わせ、被写界深度をかなり浅くした作者の潔さが頼もしいです。この濡れた羽の造形美に感動している作者の気持ちも伝わってくる作品です。

 おかめのお面でしょうか、そのお面を頭の後ろにつけた人々が、出番を待っている情景です。まるで、何人もの「おかめさん」が生きているように見え、不思議な世界に引き込まれます。お面の傾き加減や、背景を黒く落とした露出により、より一層奇妙さが増しています。お面が笑っていることから、滑稽な空気も追加表現されています。作者がこの情景を見つけたとき、「面白い!」と思った気持ちも伝わってくる楽しい作品です。

 まさに写真ならではの瞬間です。藤とサギが対話しているような瞬間を見事に捉えています。田植えが終わったばかりの苗のラインと藤の木の曲線、また、サギの立ち姿と微動だにしない水面から、この場の凛とした空気が伝わってきます。この状況を「引き」で捉えた画面構成は、作者のこの瞬間を大切にした想いも伝わってくる作品です。

 お祭りの舞台でしょうか、山車でしょうか?その上に立つ人をシルエットで捉えた作品は、空とシルエットの配分がとても上手です。この画面構成により、空の広さや高さが強調でき、気持ちいいお祭りの日の夕刻を表現しています。また画面左上に入れこんだ鳥居の先端が、流れる雲を受け止め、緩みがちな画面全体を引き締めています。祭りをやりきったという人々の気持ちを美しい夕映えが受け止めているような清々しい作品です。

 美しい光の作品です。葉の先にとまっているトンボを逆光で捉えることにより、シルエットとなったトンボは、実は主役のようで主役でなく、この画面全体から生まれる静寂を表現するためのわき役であるかと思えるほど、美しい光と葉の共演です。葉先の黄色や少しくるっと巻き気味の葉先がポイントとなり、おとぎの国の中にいるようなメルヘンチックな作品です。

 お孫さんたちが寝ている様子を撮影した作品ですが、寝ている子供たちの顔が、全員似ている点が、やはり家族だなあと感じる面白いです。そして日陰の青さとタオルケットやシーツの青色の中に、中央に眠る子供の短パンの黄色が、この写真の差し色になって効いています。夏の日の午後、遊び疲れたお孫さんがお父さんと川の字になって眠る様子を、起こさないようにそーっと撮影した作者の被写体に対する愛も感じられる作品です。

 猫が水を飲んでいる作品は、この黄昏の光の捉え方が上手です。猫が水を飲むたびに動く波紋が、画面全体に動きを生み出し、猫の生きる力を感じます。この黄昏色が炎のようにも見え、猫という動物を魔物ように見せている点が、見る人に強烈なインパクトを与えます。黒と赤だけで表現した非現実的なファンタジーを感じるかっこいい作品です。

 背の高い花、低い花をバランスよく入れ込んだ作品です。また被写界深度を上手く利用し、画面中央に低く沈む花をぼかしている点が、画面全体に優しい空気を生んでいます。花の形的には単純で難しい花を、真俯瞰から撮影し、花と花の間の取り方や構図構成で優しい立体感を出した作品です。

 この被写体の女子生徒の表情がいいです。この一瞬の表情をとらえた作者の撮影力もさることながら、被写体に対する愛情や親しみが伝わってきます。気を許した仲間だからこそ撮れる貴重な瞬間であり、またこの時が永遠に続くようにという願いもストレートに感じられます。短い青春の一瞬の笑顔を大事に切り撮った清々しい作品です。

コメントを残す