2025年栃木県朝日フォトグランプリ 最終結果

 2025年栃木県朝日フォトグランプリに多数ご応募頂きましてありがとうございます。2025/6/8(日)、栃木県文化センター第4ギャラリーB・Cにて写真家・山口規子先生による最終の公開審査が行われ、グランプリ以下各賞の結果が決まりました。多数の応募者が見守る中、山口先生が最後まで悩まれて決定した瞬間、ハラハラドキドキで審査を見学していた多数の観客からは拍手が起こりました。 

6月9日(月)から6月14日(土)におきまして同会場にて展示会が開かれ、約400名の来場者が訪れました。梅雨時期で雨模様の日が多い中、多数の方々にお越し頂きありがとうございました。

6月14日(土)午後2時より第一会議室にて表彰式が行われ、グランプリの島村さん、知事賞の塩野さんの受賞コメントを頂き、展示会も盛況のうちに終了することができました。

山口規子先生の作品別講評と各カテゴリー上位作品の作品をアップいたします。受賞者の皆様、おめでとうございました。

自然が作り出した造形と美しい光が特徴的な作品です。水面に反射する微妙な光のグラデーション、濡れた砂地に反射した光が語る質感、うっすらと砂地を覆った雪がつくる模様、すべての要素が優しく流れる時間を止めてしまったかのように幻想的です。そしてポイントとなるのが、雪の上についた水鳥の足跡です。この足跡が単なる美しい風景写真にとどまらず、風景のその先にある物語を感じさせるような表現に仕上げています。叙情詩的な素晴らしい作品です。

朝霧の中を進む電車と電話ボックスで電話をかけている少女を捉えた作品は、作者自身がはっきりとした自分のイメージを持ち、「こう撮りたい!」という演出写真です。作者の表現したい「春の朝」は、霧の中でのある出来事のように表現されています。また電車を強調するわけでもなく、少女を強調するわけでもなく、画面全体のバランスが、絶妙です。映画のワンシーンのようなドラマチックな作品です。

この小さな場所を見つけた作者の視点さることながら、友人のこの笑顔を引き出したことから、作者の日ごろからの被写体との仲の良さが伝わってきます。また、お互いに写真を撮ること、撮られることを楽しんいる様は、見る人を笑顔にします。つやつやとした光沢のある壁に反射した手や顔は、万華鏡のようでもあり、迷宮のようでもあり、面白い作品です。

湖面に反射した光の色がとても美しい作品です。背景に佇む枯れ木の並びが不規則な魅力があり、また画面手間に入れ込んだ枯れ木は逆光を浴びで、シルエット、つまり黒の木になったことにより、白と黒のリズムを生んでいいます。また水鳥や風が作る波紋が美しい光の上で輝き、枯れ木がダンスしているような情景は、見る人の心を捉えてやまない作品です。

なんとも、この男の子の表情がいいです。作者は、被写体の男の子に撮ってよいか、了承を得てから撮っているにもかかわらず、カメラを意識していない自然な表情の瞬間を捉えたところが上手いです。背景を入れて少し引きの画角は、シャボン玉の位置や流れる方向からその時の風の柔らかさ、すだれの揺れ具合など、ある夏の午後は表現しています。作者の子どもに対する愛情も感じられる愛くるしい作品です。

夕日の中のトンボを捉えた作品ですが、トンボの位置や湖面広がる波紋の位置が偶然とは思えないほど、ドンピシャではまっている様は、写真の神様からのご褒美のような瞬間です。

また被写界深度を浅めにして、背景の状況を入れ込んだことにより、この場所の広さや気持ちいい空気が伝わってきます。トンボの羽や水の描写のハーモニーが素敵な作品です。

画面左右にいる男女のたたずまいが、対照的で面白いです。見知らぬ男女なのに、家路へ向かう電車を待つ2人というだけで、どこかで関係性ができてしまいそうなドラマを感じます。満月の光、プラットフォームの光、外灯の光とともに、静かに見守る作者のこの場面に出会えた喜びまで表現されています。ある意味、エロティシズム的な魅力がある作品です。

番いのカモを捉えた作品ですが、すごい瞬間を捉えています。カモの頭の形の曲線美、羽根のグラデーション、水の動きなど、一瞬の美しい出来事を捉えたところから、作者の日ごろからの熟練の技が窺えます。そしてなんといってもカモの目です。この目からお互いを信じあい、愛し合っているような、まさに「番い」が表現されています。会話しているようにも見るさまを、作者も感動しながらシャッターを切っている愛情豊かな作品です。

一瞬、何かわからない被写体ですが、よくみると、ザラメ状に凍った水面に、風が作った道筋のようなラインが美しく表現されていいます。まずこの小さな世界に気付いた作者の感性に拍手を送りたいです。また、全体像を全部入れこまない構図は、一層、ラインの表情を豊かにしています。静けさの中に、そっと身を隠すクジャクの尾のようにも見えて、見る人の想像力を掻き立てる色気のある作品です。

差し込む光を画面中央に捉えた作品ですが、まず、作者が覗き見的に撮影している点に共感が持てます。手前に草木を入れてシルエットにし、差し込む光の中央には水面から突き出た流木。通常ならこの木を邪魔だと考えそうなところですが、作者があえてこの木を主役にしている点が写実的です。水面に広がる靄も一役買って、幻想的なおとぎの国を除き見しているような不思議な魅力を感じる作品です。

父母の金婚式の記念に写真を撮ろうと庭先にでて、写真を撮る前の何気ない場面を、作者が温かく見守りながら撮影した感じが伝わってきます。女性の優しいまなざし、男性の襟元を直すしぐさ、男性はそれを素直に受け入れている様は、このご夫婦の生きてきたすべてがここに集約されていて素敵です。そんな二人への愛情たっぷりに、シャッターを切った作品は、家族だからこそ撮れる唯一無二の心温まる作品です。

水面に映り込んだ木を捉えた作品ですが、雪をまとった木を、限られたスペースしかない水面にバランスよく落とし込んだ画面構成に脱帽です。また手間にある赤い枯れ葉がポイントとなり、画面全体を引き締めています。足元にある小宇宙を見つけ、それを美しいと感じながら撮影した作者の気持ちも伝わってきます。作者の美的センスを感じる作品です。

花嫁さんのイベントでしょうか、その舞台裏で起きている事柄を、作者の視点でユーモアたっぷりに表現しています。裏で化粧をする人、舞台へ上がる人、舞台を見ている観客、舞台の裏と表を、画面中央に入れ込んだ木のべニア板で区別することにより、ここで起きている2つの世界を見て楽しんでいる作者の気持ちも伝わってくる楽しい作品です。

まさに自然と光の共演のような作品です。枯れた蓮、水面、そこに反射した光が生み出す色彩など画面の中にいくつものポイントがあるのが特徴的ですが、作者がこの色彩だけにフォーカスしたいという迷いのない潔さを感じます。また左下の真っ黒なくろい部分を作ることにより、画面全体の空気が右上から左下に流れ、美を追求した耽美的な作品です。

鳥居がたくさん並ぶさまを、デザインチックに切り取った作者の視点に感動します。にょきにょきとぶつかりそうな鳥居がまるで生き物のように表現されています。また画面下部にある一筋の光が作品全体にまとまりを持たせ、鳥居という先入観を打ち壊したような衝撃的な作品です。

どんよりとして、光の強弱が少ない状況で、枯れ木をきちんと垂直に捉えることにより、その場の空気の冷たさが伝わってきます。コントラスト強めにすることにより、現実から逃避したような表現を用い、デザインチックでお洒落な作品に仕上っています。しかしながら、白と青が混ざり合う地点に微妙な諧調があることで、見る人が吸い込まれそうな魔力を感じるトリックアート的な面白い作品です。

2羽の白鳥の形が、偶然と思えないほどの決まりすぎた形で佇んでいます。ハートの形を作ったような寄り添い方を、逆光で捉えることにより、背景の雪とのコントラストが生まれ、甘くなりすぎず、白鳥を強調できました。富士山の麓の湖で白鳥の物語が始まりそうな予感を感じる素敵な作品です。

神社の門や少し斜めにした神輿の位置関係が絶妙なバランスです。人々が階段を上る背中から熱気が伝わってくると同時に、門の前に仁王立ちになっている男性がポイントとなって、単なる祭りの雰囲気の作品ではなく、この男性の表情から祭りという神事が神聖なものだということを気づかせてくれる力強い作品です。

この潔い構図に拍手です。ぐーっと寄って眼鏡だけ撮るのではなく、おでこまで入れることにより被写体との深いつながりを感じる作品です。眼鏡に反射した光の粒、背景のイルミネーションの粒、そして極めつけは眉毛です。ここは地球で、この人は人間だと認識していながらも、どこか「異星人」と信じたい作者の願望が強く表現されたコミカルな作品です。

何とも言えない猫の表情がいいです。逆光で捉えた猫の毛並みや切れた耳から、年老いた猫が何かを悟っているようにも見えて、この風情がたまりません。老猫の哀愁を紛らわすように、画面手前に草木の玉ボケを入れたことにより、優しい空気が流れています。猫への愛情と常に猫の気持ちを考えて撮影している作者の優しさを感じる作品です。

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